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タイトル考え中。MBTI、ソシオニクス、その他好きなことを自由に書いていきます。

思春期女性のメランコリー ~『リゾナントブルー』、『なんちゃって恋愛』からの考察~

今回は、モーニング娘。『リゾナントブルー』(2008)と、同『なんちゃって恋愛』(2009)を紹介し、そこから思春期女性にありがちな憂鬱感とはどうして生まれてしまうのかにつなげていきたいと思います。

 

リゾナントブルー(2008)/モーニング娘。


モーニング娘。 『リゾナント ブルー』 (MV)

この曲の構成は大体以下の通りです。(違ったらごめんなさい)

A→B→A→B→C→サビ→A→B→A→B→C→間奏→サビ→A→A

 

まず着目するのは、「遊びじゃキスしない」というフレーズが印象的なAメロです。Aメロは曲中何度も繰り返されますが、歌詞は一定で変化しないことからも、女の子の強い意志とプライドを感じさせます。

Bメロでは、「軽い娘に よく見られる 顔のせい?もう慣れたけど」や、「車とか 格好とか そんなの自慢は もういいから」のような、シラケた感じの歌詞が続きます。Aメロと合わせてみると、たくさんの男性に言い寄られて辟易している女の子の姿が浮かんできます。

しかしそのあとのCメロで続くのは「だけど ねえねえ だけど」という呼びかけです。誰に向けられているのかも、何が言いたいのかも、この時点ではさっぱりわかりませんが、後半になると、静かにゆっくりと告白を始めます。「独りの夜を 数えている」という告白です。これを契機に感情は高まりを見せ、サビへと突入します。

シラケていてプライドの高い女の子は、ついにサビで自分の悲しみを爆発させます。何度も「HELP ME」と、助けを求めます。しかし、助けてくれる相手は誰もいません。遊びに誘ってくる男性ならたくさんいるのに、自分の孤独を埋めてくれる人はいません。ただ、「悲しみがこだまする」のです。

 

なんちゃって恋愛(2009)/モーニング娘。


モーニング娘。 『なんちゃって恋愛』 (MV)

A→B→C→サビ→A→B→C→サビ→間奏→サビ→サビ

 

Aメロでは、デートをドタキャンされたのでしょうか、まさにシラケきっている女の子の様子が描かれます。曲調も単調で、間延びした印象を受けます。1番の「しばらくはゲンキなキャラで なんとなく生きてきたけど 気がつけば色気も出てきてるみたい」からは、突然男性からちやほやされるようになった女の子の混乱のようなものを読みとることができます。

Bメロも「ああ なんでなんだろう 私」という混乱したようなフレーズから始まります。だらっとしたAメロとは異なり、早口気味でに歌われています。思わず言葉がもれてしまった、あるいは、泣きそうで落ち着いて話すことができなかったかのようです。2番の「お母さんに電話がしたい」もあまりに唐突であり、それが女の子の不安定さをあらわしています。

Cメロはつんくさんお得意のラップです。一旦冷静になった女の子が自分自身を見つめているようですが、なんとなく気だるさがあります。ちなみに「そのうち テレビを買い替えない と いけないね」という歌詞は、2年後にある地デジ導入を意識したものだそうです。ここから、女の子があたかも実在する人物であるかのように感じられます。

曲を包みこんでいる倦怠感は一体何なのか。それはサビで明らかになります。タイトルにもなっている通り、この女の子は「なんちゃって恋愛」を繰り返しているのです。寂しいから、好きでもない男の子と恋愛します。嫌われるのが怖いから、「なんちゃって良い奴」を演じます。これが、憂鬱の正体です。しかしこの子自身それではダメだということも十分に自覚していて、最後の転調サビでは、なんとなくこの女の子が前向きな方向に歩み出していることが示唆されているようにも思えます。

女の子たちの孤独

『リゾナントブルー』のプライドが高い女の子も、『なんちゃって恋愛』の流されてしまう女の子も、10代後半くらいの年齢によくいるタイプの女の子です。どちらのタイプもよくモテて、男性には苦労していないように見えます。それにも関わらず、心はいつも孤独を感じています。孤独とプライドが葛藤しているのが『リゾナントブルー』の女の子であり、寂しさに耐えられずに好きでもない男性と付き合っては別れてを繰り返すのが『なんちゃって恋愛』の女の子なのです。

では、なぜこの女の子たちは孤独を感じるのでしょうか。原因は色々あると思いますが、ここではひとまず誘因について考えます。孤独を顕在させた引き金と言ってもよいでしょう。

 

「モテモテ」な10代後半

女性は思春期を迎えた頃から、急激にモテ始めます。モテるというと語弊があるかもしれませんが、少なくとも男性からのアプローチが増えることは本当です。たとえば、ネトゲSNSをやっていると、よく知らない男性からデートの誘いを受けることが山のようにあります。あるいは、見知らぬ男性から「お友達になりましょう」と道端で声をかけられることもあります。それ以外にも、ほとんど音沙汰なかった中学時代の同級生から遊びに誘われたり、バイト先の先輩が馴れ馴れしかったりすることもあるかもしれません。個人差はあるでしょうが、大体の女性が少なからずこういった経験をしていると思われます。

さっき、モテるというと語弊があると言ったのは、多くの人が想像している「モテる」との間にずれがあるからです。一般に「モテる」とは、自分に恋している他者が大勢いる状態です。SNSや路上でよく知らない男性からデートに誘われても、その人が自分に恋しているとはあまり考えないでしょう。中学生でも「ヤリ目」という言葉を知っていますし、警戒すべきであるということも弁えています。

しかし、実際にこのような男性のアプローチを受けるとき、女性が冷静でいられるかどうかは疑わしいです。「ヤリ目」の人は「ヤリ目」であることを隠して接近するからです。ナンパであれば、「引っ越してきたばかりだから、友達が欲しくて」と言って警戒心をほぐそうとしたり、「一目見て可愛いと思った」とおだてて良い気分にさせようとします。頭では真に受けるべきではないお世辞であると理解しているのですが、何度もおだてられているうち、ある解釈に辿り着くことがあります。「ナンパ師だって声をかける女性は選んでいるにちがいない。つまりナンパされる私は魅力的であるにちがいない。」こうして女性は、自分の性的な価値を自覚していきます。

満たされない恋愛

このように接近してきた男性と受動的に交際を開始すれば、当然厄介なことになります。その男性が興味を持っているのは、女性の身体だけだからです。むしろ、女性の内面を邪魔だと感じていることさえあります。交際前から交際初期にかけて優しかった彼はどこに行ってしまったのかと思うほど、自分に対して無関心になります。連絡を拒んだりデートが雑になったりします。一方で、どっぷりと依存されるケースもあります。毎日のように家に呼ばれたり甘えられたりして一見愛されているように思えますが、一方通行的な関係であることが多く、女性の意向は尊重されません。それゆえこの場合も、女性の内面には無関心であると言えます。女性にフラストレーションがたまることは言うまでもありません。

付き合っていても、自分の意見は聞き入れてもらえず、我慢を強いられ、満たされることがありません。ここで強く孤独を感じることになります。このような交際を続けていれば、恋愛すること自体嫌になっていきます。どうせまた付き合っても、同じような目に遭うだけだと悟り、どんどん冷めた考え方をするようになります。しかし、一瞬でも相手に必要とされれば、つまり自分の身体だけでも求められれば、そのときだけは孤独を忘れることができるのです。そのために、何度も付き合っては別れてを繰り返します。交際が長続きしないのは、最初しか楽しくないからです。好きじゃない相手でも、一時的に寂しさ紛らわせてくれるならいいやと妥協しますし、そのわりに捨てられるのは怖いので、自ずと相手の機嫌を伺うようになります。こうして、自分の意見を言わず、我慢し、満たされようとしない彼女が完成します。

 

『リゾナントブルー』、『なんちゃって恋愛』は、典型的な女性の孤独を同じような年代の女性たちが歌った曲であり、だからこそ大きな共感を呼んだのだと考えられます。この2曲は、高い評価を得ているこの時期のモーニング娘。楽曲の中でも、ずば抜けて良い楽曲であると私は感じています。